第１学年通信「スクラム」（平成２８年７月８日発行）から   

   義人（よしと）は白沢中学校での教え子です。彼は中学・高校と野球部の主将を務めました。何事にも陰日向なく、ひたむきに取り組むので、とてもさわやかで、常に堂々としていました。

　  義人のリーダーシップは抜群でした。部員に何を目標として部活動に取り組んでいるのか、目標を達成するためにはどうしなければならないのかを理解させ、充実した練習をしてくれました。おかげでたくましさの中に優しさがある、そんなチームに成長しました。

　 新人戦で、目標である県大会出場を果たすことができました。決勝で逆転で敗れ、「県大会優勝」が新たな目標になりました。翌夏、また決勝に進出することができました。公式練習の時に熱中症になり、倒れた義人も気力で出場しました。２点リードの最終回、二死一・二塁のピンチを迎え、相手の代打の切り札が登場し、センターに低いライナーを打ちました。センターの義人は迷わずダッシュし、ダイビングキャッチの体勢に入りました。「抜けたらサヨナラ負けだ」と私は思わず下を向きました。そのとき、球場に大歓声が響きました。抜かれると思った打球を義人がキャッチし、グラブを高々と差し出していたのです。夢にまで見た県大会優勝。逃げかけていた勝利の女神を、ふらふらの義人が連れ戻してくれました。あの感動を私は生涯忘れません。

　 義人は父と同じ職業である建築業に就きたいと思っていました。郡山北工業高校建築科を志望していましたが、倍率が高く、学力的には少し厳しかったと思います。しかし、彼にはすばらしい人間性がありました。生徒会副会長や合唱コンクールでは無伴奏曲の指揮者も務めました。あらゆる面で抜群のリーダーシップを発揮し、彼の周りには常にさわやかさと明るさが漂いました。「学校を代表するにふさわしい、この生徒の進路希望を何とかして叶えたい」と満場一致で推薦され、合格しました。安達郡の後輩達が「義人君と一緒に野球をしたい」と続々郡山北工に入学しました。歴史作家の司馬遼太郎氏は坂本龍馬を「明るさは人を惹きつける」と評しました。彼のさわやかさにより、北工野球部は部員数が１００名を超えました。　　　　　　　　

　 義人の素晴らしさを支えたもの。それは家族です。彼の８人家族には近年失われつつある温かさと強い結びつきがあります。２児の父となった３５歳の義人は今もさわやかで、たくさんの人を惹きつけています。９月２日の「職業人に聞く会」に講師として来校します。どのようなことを話し、どのような技術を教えてくれるか、楽しみにしてください。　
　 （さわやかで、向日葵のような男～「明るさ・さわやかさは人を惹きつける」～より）